赤岩青巌峡 デカパン大王RP
デカパン大王にトライを開始してから、いったい何便かかっているだろうか。アップをし、ヌンがけをして、1時間半おきに本気トライをして、最後にダメ押しトライをする。青巌峡でいつものルーティンをこなすのにはとっくに飽きている。
昨年トライを開始し、秋の終わりまでにレッドポイント体制に入っていたものの、最後まで力を試されるリップに幾度となく落とされていた。
そして北海道の長い冬に突入。指やフィジカルは大分落ちたが、デカパン大王という目標があったので、トレーニングを継続することができた。4月5月でフィジカルを戻し、再び6月にはRP体制に。
しかし青巌峡の5.13は甘くない。
ラストホールドまで二、三手に迫り、何度落とされたことか。これがワンテン地獄と言われるやつか。(自分にとっての)高難度のレッドポイントは本業ではないので、初めてその地獄沼にハマった。早く辞めて層雲峡のクラックに行くべきと分かりつつも、手軽に自分の限界に挑戦できるこのルートから、なぜか逃げられない。
最後の厳しいハングを越すには、下部の繊細な右トラバースまでを如何に完璧に仕上げ、かつ、その後の左トラバースとヒールフックのレストポイントまでをどれだけスムーズにこなすかがカギだった。トライを重ね、1つ1つの動きを細かく修正していく。
足の振り方やレストポイントでのレストの工夫まで、細かく追求した。
【昨シーズン、日の短い秋にヘッドライトを使ってギリギリまで本気トライ】
【持久力が試されるラストパートへ】
今日の本気トライ前のアップトライでも、最終ムーブ、右手クラックから左手クロスでカチを取りに行くムーブから、右手二連発、15センチ真上に上げてアンダー微妙ガバを取りにいくムーブに変更。
これまで固めたムーブを変えることに勇気は必要だったが、左手クロスのムーブは若干遠く、そこで3回落とされたので、何か違う事を…と変更を決意した。
本気トライ。6月も終盤となり、暑さからかホールドは湿気を帯びている。
しかし、前週のトライから、ノースケイブジムでトレーニングを2回重ね、確実に自信はあった。あと一手さえ仕留めれば、終わりだ。
完登が近づくにつれ、緊張で出だしの動きが硬くなっていたが、7手程で右トラバースに差し掛かる頃には完全に集中でき、これまでで最もスムーズに省エネで中間のガバを捉えた。
レストし過ぎても徐々に体感が疲れるので、適度なタイミングで左トラバースへ。
厳しいワンムーブを終え、左手のちょいガバで少しシェイク、足を使う事を意識し、両手で若干レストできるホールドで少しだけ休む。
そして、いよいよ核心地帯手前でヒールフック。クリップ。出来るだけ色々な体制で右腕、左腕、体幹と交互に休め、長居は禁物なのですぐさまラストムーブにとりかかる。
右足をワンツーと、上段の角スタンスに上げ、左手をワンツースリーと経由して、リップへ。
まだ余裕がある。
しっかりと足を踏み替え、体感を意識して、右手サイドクラックをつまむ。
まだ呼吸ができている。
足を入れ替え、しっかりとスタンスを見る余裕もあった。
そして、右手をパンっと叩き上げ、クラックをアンダーで捉える。止まった。まだ落ちていない。
少し慌てたが、すかさず左手を3回落とされたラストカチに寄せ、右手でドガバを掴む。
急いで足を上げてマントルを返し、
デカパンの頂上に倒れ込んだ。
やっとデカパン大王の呪縛から開放された…
何度か冷却期間を設けようか、と悩んだ時期もあったが、これで気持ちよく次にいける。
繊細な足使いや、最後まで油断できないムーブ、トライし続けなければいけない強力なメンタルを磨いてくれる素晴らしいルートであった。フリークライミングの厳しさを学ぶことができるルートであった。
レッドポイントのビレイは、8ヶ月前に同じくレッドポイントした佐藤ベガ雄であった。
そしてその後、エサオマン、ラビアンローズ、死刑執行と、青巌峡のハードルートを軒並み触り、当然の如く打ちのめされ、青巌峡の厳しさを改めて体感すると共に、青巌峡のスター達(=常連)の凄さをひしひしと感じる1日となった。
さて、次は何をやろうか。
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ラスト核心
左手リップ
左足伸ばしてスメアしながら右手クラックツノ
足入れ替え 腹筋意識してなるべく壁の中に
右手クラック15センチ バーンと上げてアンダー悪ガバ
左手クロス気味にカチ
右手勝利ドガバ